CEYREN08と首元に付けられた品番のジャンク

製作者はユウカ(中3)。美しい歌声と美貌を持つ人魚の姿をしたアニマトロニクス「CEYREN08」は最高傑作だった。リアルタイム入力のプログラムなしでは会話が不可能なだいぶアナログなロボットだがそれを作ると見世物にしようとする金持ちが居たが気にしていない。

1人の老人に売り渡したらたちまちCEYRENは子供達の人気者に。その子供の中に不治の病を抱えた子供が居て、同情した持ち主は彼の家に借りるという形で連れて行った。その際彼女が作ったAIを持ち主が組み込んで会話が成立するようにした。(記憶があるのはAIを組み込んでからの話なのでユウカの事は知らない)

子供とは他愛のない会話をしたり歌で寝かしつけたりの毎日。苦ではなかった。彼が居ると不思議と楽しかった。嬉しかった。だが日に日に呼吸をするのも大変になり遂には呼吸機を付けなくてはならなくなり、会話という会話は出来なくなった。意思疎通は文字盤になった。

あれから胸が苦しくなっていった。このまま彼の容態が変わりませんように…毎日願うようになった。

 

「(僕眠くなってきちゃった…いつものお歌歌って欲しいな…海に行けそうな曲だからその歌好きなんだ…)」

彼の最期の意思表示だった。彼が既に死んでいるのを知っていながら埋められるまで壊れたように歌い続けた。胸が苦しい、この苦しみは一体何だったのか分からないまま持ち主に返された。もうあれから歌うのをやめてしまった。

また見世物に回されたが歌う気が失せて見世物にならなかった。そしてユウカに返されて声とAI、綺麗な下半身をもぎ取り残りはスクラップ場に放り込まれた。

きっと新しいCEYRENが製作されるだろう。

砂嵐混じりに見えた世界はみんな灰色だった。僅かに意識があった時に声が聞こえた気がした。

 

「僕の所に来るかい?」